髪の色のことで、ストレスがたまる
Nature Medicine
2013年6月10日
マウスの創傷が治癒する間に、毛包にある色素幹細胞(色素をつくるメラニン細胞の前駆体)のストレスホルモン受容体を刺激すると、皮膚の外層に貯蔵されている成熟メラニン細胞が補充されることがわかった。尋常性白斑や白皮症といった皮膚色素異常症の治療に、色素幹細胞やこの経路の活性化が利用できる可能性があることが、この知見によって明らかになった。
皮膚と毛髪は、物理的な障壁となることによって紫外線照射による損傷から体を守るとともに、そこに含まれるメラニン細胞が色素を生産して、紫外線などを吸収している。しかし怪我をしたときには、皮膚のメラニン細胞を補充する必要がある。補充した細胞が新しい色素を生産すると、損傷作用のある太陽光線から回復中の皮膚を保護するのに役立つからである。
Mayumi Itoたちは、皮膚切除によってマウスに傷を負わせると、治癒の過程で毛包幹細胞が皮膚の外層へと移動し、メラニン細胞へと分化することを明らかにした。さらにマウスとヒト両方の皮膚培養で、短波長紫外線(UVB)照射した場合にもこれらの幹細胞が移動すること、それにはストレスホルモン受容体Mc1rの働きが必要なことも明らかになった。
ストレスホルモンは皮膚の色素沈着を促進することが知られているが、ストレスは若白髪に結びつくことも知られている。著者たちは、ストレスホルモンによるMc1rの過剰刺激に応じて色素幹細胞が移動し、毛包の色素幹細胞が枯渇すると考えると、この矛盾が説明できそうだと述べている。
doi:10.1038/nm.3194
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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