自閉症スペクトラム障害と知的障害に関与する新たな遺伝子
Nature Genetics
2010年5月17日
自閉症スペクトラム障害(ASD)と知的障害の患者のSHANK2遺伝子に変異が生じていることを報告する論文が、Nature Genetics (電子版)に掲載される。この知見は、シナプス構造の欠損とASDにつながりがあるとする考え方をさらに裏付けている。もう1つの研究論文では、4つの家系で、IQSEC2遺伝子の変異が知的障害の原因になっていることが明らかにされた。
自閉症は、広汎性神経発達障害で、米国では子供110人に約1人の割合で発症し、全世界で数千万人が罹患している。自閉症の患者は、社会的交流能力とコミュニケーション能力に障害があり、同じ行動を繰り返したり、ある決まった行動をとるといったパターンがみられる。これまでに、シナプス(2つのニューロンの接合部で信号伝達が行われる)に関与するいくつかの遺伝子が自閉症に関連していることが明らかになり、シナプス構造が損なわれていないことが、言語技能、社会技能、認知技能の標準的発達にとって重要であると示唆されている。知的障害(精神遅滞)は、自閉症とは臨床的に異なっており、より頻繁にみられる疾患で、一般集団の50人に1人が罹患している。
G Rappoldらは、知的障害の患者とASDの患者(合計580人)の解析を行い、血縁関係にない患者数人において、SHANK2遺伝子の変異を同定した。また、J Geczらの研究では、4つの家系で、IQSEC2遺伝子の変異が知的障害の原因になっていることがわかった。
doi:10.1038/ng.588
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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