Research Press Release
精神病質の報酬
Nature Neuroscience
2010年3月15日
正常人の精神病の特性は、薬理学的報酬あるいは金銭報酬に応じて増加する神経伝達物質ドパミンの放出に結びついている。Nature Neuroscience(電子版)に発表されるこの結果は、精神病質に関連する衝動性、反社会的な行動、物質乱用がドパミン作動性報酬系の活動亢進によるものである可能性を示唆している。
J Buckholtzらは被験者群のさまざまな精神病特性を評価し、さらに脳の側座核の活動とドパミン放出を測定した。側座核は、動物研究で物質乱用の衝動的、攻撃的特性と結びつけられている。アンフェタミン投与によるドパミン放出は、特性スコアの衝動性・反社会性の個人スコアと相関することがわかった。このスコアは金銭報酬を見越した脳活動とも相関性があった。
以前には精神病質は情動の欠如ではないかととらえられ、研究では恐怖処理と共感の根底にあると考えられる脳経路の欠陥が重要視されていた。今回の結果からは別の重要な神経機構が示唆され、これは特に精神病質に付随する物質乱用の問題にかかわる可能性がある。
doi:10.1038/nn.2510
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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