【進化】フォークランドオオカミの起源の謎
Nature Communications
2013年3月6日
絶滅種のフォークランドオオカミは、最終氷期極大期に、凍結した海を渡ってフォークランド諸島に定着したという見解を示した論文が掲載される。謎に包まれたフォークランドオオカミの起源については、ヨーロッパの探検隊が17世紀に、その存在を報告して以来、未解明のままになっている。
フォークランドオオカミは、フォークランド諸島で唯一の固有哺乳類だ。群島部で自然発生する大型哺乳類として、世界で唯一の実例であったため、その存在理由については、かのダーウィンも頭を悩ませた。フォークランドオオカミは、人間の狩猟活動によって、19世紀に絶滅したが、生体試料を入手できなくなったことで、フォークランドオオカミの起源に関する研究は、特に困難を極めてきた。
今回、A Cooperたちは、南米大陸本土に生息していたフォークランドオオカミの絶滅近縁種の半化石から得られた古い遺伝的データを取得し、フォークランドオオカミの博物館標本から得られた遺伝的データと比較した。その結果、フォークランドオオカミが、大陸本土に生息する姉妹種から孤立したのが約1万6千年前になってからのことで、最終氷期に対応していることが示唆された。氷期中の海水準の低下で、南米大陸とフォークランド諸島の距離が短くなり、この時期に形成された海底段丘と相まって、海峡が浅くなった。Cooperたちは、この海峡が長期間にわたって凍結していた可能性があることから、フォークランドオオカミがフォークランド諸島に定着しやすい条件ができあがっていた可能性があると考えている。
doi:10.1038/ncomms2570
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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