マラリア原虫のゲノムを標的化する
Nature Methods
2012年8月27日
マラリア原虫Plasmodium falciparumのゲノムを改変する選択的なヌクレアーゼの利用法が、今週のNature Methodsに掲載される。これにより、薬剤耐性メカニズムなど、この重要なヒト寄生生物に関する遺伝学的研究が可能になると考えられる。
世界では何百万人もの人がマラリアにかかっており、この疾患に対処するうえで薬剤耐性は大きな問題になっている。マラリア原虫に関する研究は、確実な研究ツールが存在せず、特にそのゲノムを操作するツールがないために、進展が遅れている。
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を作製すれば、多くの生物種のゲノムの狙った部位を切断し、最終的には改変を施すことができる。これまでにZFNは、特にハエ、魚類、酵母、線虫、マウス、ラット、およびヒト細胞のゲノムの改変に利用されている。
David Fidockたちは、ZFNによって最も致死性の高いマラリア原虫P. falciparumのゲノムを改変したことを発表している。このマラリア原虫は、ゲノムのヌクレオチドバランスがほかの生物と異なるとともに、内因性のDNA修復装置の一部にも違いがあり、それがZFNの有効性を妨げる要因となる可能性もあった。しかし研究チームは、ZFNでPlasmodiumゲノムが効果的に操作されることを明らかにするとともに、ZFNを用いて原虫遺伝子の除去、遺伝子の入れ替え、および遺伝子配列の改変を、迅速かつ効率的に行っている。
doi:10.1038/nmeth.2143
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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