Research Press Release
腫瘍形成性細胞を選ぶゲル
Nature Materials
2012年7月2日
軟質フィブリンゲルは癌細胞プールから得た腫瘍形成性細胞の増殖を促すことが、今週のNature Materials電子版に報告されている。ゲルによって増殖促進した細胞をほんのわずか、野生型マウスに注射することにより、肺に腫瘍が形成された。したがって、腫瘍形成性細胞を選択するこの方法は、癌細胞が腫瘍を形成する能力と遠隔臓器に広がる能力を説明する機序の研究に役立つかもしれない。
腫瘍形成能を持つ癌細胞の識別は、これまで、幹細胞マーカーの発現に依存していたが、この方法は不正確であることが多い。Ning Wang、Bo Huangおよび共同研究者らは、はるかに効率よく着実に腫瘍形成性細胞を選択する方法について報告している。フィブリン(血液凝固に関係する線維性タンパク質)でできた低剛性ゲルの中で培養したマウスまたはヒト癌細胞株のサブセットは、速く増殖して大型の丸いコロニーを形成することを実証したのである。また、遺伝学的に同一のマウス、免疫不全のマウスのいずれについても、そのコロニーから抽出した細胞の方が、軟質フィブリンゲルの上、プラスチック皿の表面、または同程度の剛性の軟質コラーゲンゲル内で培養した細胞よりもはるかに効率よく、注射部位または肺で腫瘍を形成することが実証された。
doi:10.1038/nmat3361
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change