Research Press Release
可逆的な共有結合的阻害剤
Nature Chemical Biology
2012年4月2日
可逆的な共有結合的メカニズムで標的と相互作用する化合物を作製する意外な化学的方法が、今週のNature Chemical Biologyで発表される。
がんをはじめとする多くの疾患の治療で利用されている共有結合薬は、標的タンパク質の特定アミノ酸残基ときわめて特異的に相互作用するものが多く、不可逆的であるために長期的な効果が得られる。ある種の共有結合薬は、目的外の細胞のタンパク質と反応することが知られており、そうした「非特異的」な相互作用も長期にわたって持続するため、望ましくない結果が生ずる場合がある。
Jack Tauntonたちが発表するのは、アクリルアミドと呼ばれる一般的な種類の共有結合薬を可逆的な阻害剤に転換する化学的な方法である。研究チームは、キナーゼRSK2(細胞の分裂、増殖、および生存に重要な酵素)の不可逆的な共有結合的阻害剤を可逆的な阻害剤に転換することにより、その方法の有用性を示した。この化学的方法は、特定のアミノ酸残基の共有結合的標的化で得られる特異性のメリットを維持しながら、不可逆的な非特異的薬物活性の潜在的な悪影響を抑制する可能性がある。
doi:10.1038/nchembio.925
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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