Research Press Release

神経科学:脳内インプラントが自宅での自立したコミュニケーションを回復させる

Nature Medicine

2026年6月16日

重度の麻痺を抱える患者が、長期にわたり自立して音声によるコミュニケーションやコンピュータの操作を可能にする皮質内のブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI:brain–computer interface)を報告する論文が、Nature Medicine にオープンアクセスで掲載される。この知見は、高性能BCIの利用を厳重に管理された環境に限定してきた長年の課題に対処するものであり、BCIが日常生活における実用的な支援ツールとしての有用性を示すものである。

発話能力や機器操作能力の喪失は、筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)などの疾患にともなって生じる一般的な症状であり、しばしば自立性や生活の質を低下させる。既存の支援技術は役立つものの、動作が遅かったり、信頼性が低かったり、訓練を受けた専門家による多大な支援を必要としたりすることが多い。これまでの研究では、管理された環境下での発話やカーソル制御において高い精度が示されてきたが、自宅での自立した使用を可能にした例は限られており、発話、あるいは発話とコンピュータ制御の両方を同時にサポートした例はこれまで報告されていなかった。

Nicholas Cardら(カリフォルニア大学デービス校〔米国〕)は、ALSによる重度の麻痺と発話障害を抱える男性が、約2年間にわたりマルチモーダルBCIをほぼ毎日自宅で使用した事例を報告している。脳の言語運動野に埋め込まれた電極アレイから記録された神経信号は、リアルタイムでテキストやカーソル制御に変換された。参加者は、このシステムを3800時間以上使用し、1分あたり平均56語のペースで18万3060文(約200万語)を伝達し、その92%が「ほぼ正確」以上と評価された。構造化されたテストでは、12万5000語以上の語彙から、単語の正確性は99%を超えた。持続的なパフォーマンスは、より迅速にキャリブレーションを行うデコーダー、適応型ソフトウェア機能(バックグラウンドキャリブレーションや視線にもとづく制御を含む)、および介護者が独立してシステムを操作できるようにした簡素化された起動プロセスによって実現された。

これらの知見は、皮質内BCIが、研究者の支援なしに長期間にわたり、安定的かつ高性能なコミュニケーションを提供できることを示している。しかし、本研究は参加者1名のみを対象としたものであり、システムの利用に関しては介護者による一定のトレーニングが依然として必要である。今後は、より広範な適用可能性の検証、携帯性の向上、ならびに自然な会話中における一貫して高い精度の実現に向けて、さらなる研究が必要である。

Card, N.S., Singer-Clark, T., Peracha, H. et al. Long-term independent use of an intracortical brain–computer interface for speech and cursor control. Nat Med (2026). https://doi.org/10.1038/s41591-026-04414-6
 

doi:10.1038/s41591-026-04414-6

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

「注目のハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度