Research Press Release
CMLの的外れ
Nature Chemical Biology
2012年1月30日
慢性骨髄性白血病(CML)の治療用として臨床試験が進められている新種の薬剤に期待されているメリットに関して、Nature Chemical Biology(電子版)に発表される研究で疑問が提起されている。 BCR-ABL融合腫瘍タンパク質の形成は、CMLの典型的な分子事象である。イマチニブのような選択的薬剤でこの腫瘍タンパク質の活性を阻害することによってCML患者の転帰が改善しているが、最終的にはイマチニブに対する耐性が問題になる場合がある。CMLでもう1つ重要な事象は、遺伝子調節因子STAT5の活性化である。正常細胞および一部の悪性細胞では、STAT5がキナーゼJAK2によって活性化される。この関係により、JAK2阻害剤群が医薬品として開発され、現在ではCMLの臨床試験が進められている。 G Superti-Furga、V Sexlたちは、そうしたJAK2阻害剤群の中に、その活性がJAK2の発現と無関係で、BCR-ABLの阻害に由来すると考えられるものがあることを明らかにした。この研究は、BCR-ABL遺伝子融合を有するCML患者ではJAK2が分子標的として最適のものではない可能性を示唆している。
doi:10.1038/nchembio.775
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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