Research Press Release

社会科学:電気自動車は従来の自動車と同じくらい歩行者にとって安全である

Nature Communications

2025年12月10日

電気自動車は、従来の自動車と比べて歩行者との衝突事故に巻き込まれる可能性も、重傷を負わせる可能性も高くないことを英国のデータをもとにした分析を報告する論文が、オープンアクセスジャーナルNature Communications に掲載される。この結果は、電気自動車の導入が歩行者の安全を損なわないことを示しており、持続可能な交通への移行における主要な懸念事項に対処するものである。

運輸部門は、世界の温室効果ガス排出量に大きく寄与しており、多くの国が排出量削減のため電気自動車の利用を推進している。しかし、電気自動車は走行音が静かで重量が重いことから、特に歩行者に対する道路安全への潜在的影響が懸念されてきた。路上を走る電気自動車が増え続ける中、こうした安全上の影響を理解することはきわめて重要である。

Zia Wadud(リーズ大学〔英国〕)は、2014年から2023年までの英国政府の道路安全データを分析した。その結果、2019年から2023年(電気自動車の所有が急激に増え始めた期間)において、電気自動車との衝突事故における歩行者の負傷率は、従来の自動車との衝突事故の負傷率と統計的に同等であることが判明した。2019年には、電気自動車とハイブリッド電気自動車の双方で被害率が低下している。これは車両接近通報装置(Acoustic Vehicle Alerting System;低速走行時にほかの道路利用者に車両の存在を音で知らせる安全装置)の導入に続く現象だが、この関連性を検証するにはさらなるデータが必要である。これらの知見は、電気自動車が従来の自動車よりも歩行者の安全に対するリスクが高くないことを示している。

今後の研究では、車両接近通報装置などのアクティブセーフティ技術の役割や、車両間衝突における電気自動車の影響に焦点を当てるべきである。これにより、電気自動車の安全面への影響をより包括的に理解できると、著者は結論づけている。

Wadud, Z. Comparing pedestrian safety between electric and internal combustion engine vehicles. Nat Commun 16, 10824 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-66463-8
 

doi:10.1038/s41467-025-66463-8

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