健康:単回投与治療が脊髄性筋萎縮症の症状を改善する
Nature Medicine
2025年12月9日
単回投与の遺伝子置換療法が、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy)の2歳以上の小児および青少年の患者における運動能力の改善に有効であることを報告する論文が、Nature Medicine にオープンアクセスで掲載される。126人の小児および青少年を対象としたこの第3相臨床試験の結果は、2歳を超えた脊髄性筋萎縮症患者に対する、生涯にわたる反復投与治療に代わる選択肢となり得る。
脊髄性筋萎縮症は、時間の経過とともに筋力低下や運動機能喪失を引き起こす希少な遺伝性疾患である。この疾患は、健康な神経細胞に必要な生存運動ニューロンタンパク質(survival motor neuron)と呼ばれるタンパク質を体内で十分に生成できないために発症する。オナセムノゲン・アベパルボベク(Onasemnogene abeparvovec)は、この欠損タンパク質の産生を単回治療で回復させる遺伝子治療である。しかし、現在米国と欧州で承認されているのは、2歳未満の小児に対する単回静脈内投与のみである。したがって、2歳以上の患者には、病気の進行を遅らせる治療しか受けられず、これらは注射または経口投与で定期的に継続する必要がある。
Richard Finkelら(セント・ジュード小児研究病院〔米国〕)は、脊髄性筋萎縮症の2歳以上小児を対象に、脊髄液内直接投与によるオナセムノゲン・アベパルボベクの単回投与の安全性と有効性を評価した。1年間にわたる試験には、自力で歩行経験がなくとも座位可能な2~18歳の小児と青少年126名が参加した。参加者は、遺伝子治療群(75名)とプラセボ群(51名)に無作為に割り振られた。有効治療群は、有効性が確認されたテスト(仰向けから座る姿勢への移行、歩行、および階段昇降など33の特定技能の向上を評価)において、非治療群と比較して運動機能スコアが有意に大きく改善した。副作用は、両群で同程度であり、おおむね管理可能な範囲であった。
この結果は、2歳以上の患者に対して脊髄液に直接投与するこの単回治療が有効であることを示唆している。さらに、乳児期を超えた患者への脊髄性筋萎縮症向け遺伝子治療の適用拡大を支持するものであり、年長の小児や青少年における未解決のニーズに対応するものである。ただし、研究期間はわずか12か月であったため、長期的な安全性と有効性を確認するには、より長期の経過観察が必要である。
- Article
- Open access
- Published: 08 December 2025
Proud, C.M., Vũ, D.C., Wilmshurst, J.M. et al. Intrathecal onasemnogene abeparvovec in treatment-naive patients with spinal muscular atrophy: a phase 3, randomized controlled trial. Nat Med (2025). https://doi.org/10.1038/s41591-025-04103-w
doi:10.1038/s41591-025-04103-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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