惑星科学:地震観測による火星内部固体核の検出
Nature
2025年9月4日
NASAのインサイト(InSight:Interior Exploration using Seismic Investigations, Geodesy and Heat Transport)ミッションが火星の固体内核を検出した証拠を報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この発見は、火星および類似天体の性質と進化に関する理解を深めるものである。
火星の内核は、少なくとも部分的に液体であることが知られており、理論研究では核に固体成分が存在する可能性が示唆されていた。しかし、これまでの研究では、核のどの部分が固体であるかを確認できていなかった。
Daoyuan Sunら(中国科学技術大学〔中国〕)は、NASAのインサイトミッションから得られた地震データを解析し、火星内核の構造を調査した。測定結果から、PKKP(深部コア通過波)とPKiKP(固体内核の存在を示す反射地震波)という2つの地震波相が検出された(PKiKPは地球と月で既に実証済み)。PKKP波の地震波は、インサイト探査機の地震計に到達するまでに、核が純粋な液体である場合に予想されるよりも50~200秒早く到着した。これは、核構造に固体要素が存在することを示唆している。これらの数値に基づくさらなる計算により、著者らはこの内核の半径を約600キロメートルに限定することができた。
この発見は、火星に固体の内核が存在することを直接的に証明するとともに、赤い惑星の進化に関する知見を提供するものである。
- Article
- Open access
- Published: 03 September 2025
Bi, H., Sun, D., Sun, N. et al. Seismic detection of a 600-km solid inner core in Mars. Nature 645, 67–72 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09361-9
doi:10.1038/s41586-025-09361-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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