Research Press Release

環境科学:コンゴ民主共和国を侵食する都市部のガリー

Nature

2025年8月28日

コンゴ民主共和国では、2004年から2023年の間に都市部のガリー(urban gullies;都市部の小渓谷)と呼ばれる浸食現象により、推定で11万8,600人が避難を余儀なくされたことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この結果は、同国の都市化が進む中で都市ガリーの深刻な影響が迫っていることを示しており、浸食を管理するためのインフラ整備の必要性を示している。

都市ガリーは、主に水浸食に脆弱な開発地域に形成される峡谷状の地形であり、連続する降雨によって急速に拡大する場合がある。グローバル・サウスでは都市化が急速に進んでおり、適切な都市計画なしに都市が拡張することで、こうしたガリーが発生するリスクが高まる。植生が失われ、道路や屋根など不浸透性の地表が増えることによっても、その危険性が増す。ガリーが出現および拡大すれば、住民は住まいを失い、財産も損壊する。

Guy Ilombe Mawe(リエージュ大学〔ベルギー〕)、Matthias Vanmaercke(ルーヴェン・カトリック大学〔ベルギー〕)らは、コンゴ民主共和国26都市の2,922の都市ガリーの衛星画像を解析した。過去の記録との照合により、1950年代に存在していたガリーは46件のみで、そのほとんどは都市の無秩序な拡大や道路建設が原因であることが判明した。著者らは、都市ガリーを測定し、平均で長さ253メートル、最広部で31メートルの規模であることが分かった。調査対象の2,922件のうち、99%に当たる2,897件が2004年から2023年の間に10平方メートル以上拡大していた。衛星データと人口密度推計を組み合わせることで、著者らは、2004年から2023年の間に都市ガリーによって直接的に118,600人が移転を余儀なくされたと算出した。これは、年間平均5,930人のペースである。著者らは、このペースが2020年から2023年の間に年間12,200人へと加速したと指摘している。

著者らは、人口増加と気候危機の継続に伴い、今後も都市ガリーが形成および拡大し続けると指摘している。安定化のための対策は存在するものの、コストが高いため、適切な都市計画と適応型インフラ整備による予防措置がより費用効果が高い可能性があると、著者らは提案している。

Mawe, G.I., Landu, E.L., Dujardin, E. et al. Mapping urban gullies in the Democratic Republic of the Congo. Nature 644, 952–959 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09371-7
 

doi:10.1038/s41586-025-09371-7

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