進化:人間の二足歩行への二つの小さなステップ
Nature
2025年8月28日
人間の骨盤の上部である腸骨(ilium)は、進化の過程で二つの主要な構造的革新を遂げたことにより、人間の二足歩行が可能になったことを報告する論文が、Nature にオープンアクセスで掲載される。この研究は、人間を特徴付ける二足歩行の特性を支える発生学的および遺伝的な基盤を提示するものである。
腸骨は、人間が直立姿勢を維持するために使用する重要な殿筋(gluteal muscles)を固定する、骨盤(pelvis)の大きな広がった部分である。人間と他の類人猿の腸骨の違いは、進化上の特徴的な違いである。しかし、人間特有の腸骨の形状にいたった発生過程は不明であった。
Terence Capelliniら(ハーバード大学〔米国〕)は、組織学、解剖学、および機能ゲノム学の手法を用いて、この構造が独自の形状を獲得した仕組みを明らかにした。一つの重要な変化は、軟骨の形成に関するものである。軟骨の成長板の向きが変化したことで、腸骨は他の霊長類の腸骨とは異なり、直角に配置されるようになった。もう一つの重要な変化は、骨の形成の過程に関わるものである。著者らは、人間の腸骨における軟骨上の骨細胞の沈着のタイミングと空間的な違いを、非人間霊長類の腸骨や人間の長骨と比較して特定した。
これら二つの革新は、組織および分子レベルで相互に関連している。人間の腸骨の発生過程中に活性化する数百の調節配列が同定された。これらの配列は、人間の進化的変化の証拠を示しており、複雑な相互作用する配列が時間をかけて選択され、人間の骨盤の独自の形状が生み出されたことを示唆している。
- Article
- Open access
- Published: 27 August 2025
Senevirathne, G., Fernandopulle, S.C., Richard, D. et al. The evolution of hominin bipedalism in two steps. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09399-9
doi:10.1038/s41586-025-09399-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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