ゲノミクス:古代 DNA がピクーリス・プエブロ族の人口史を補完する
Nature
2025年5月1日
米国ニューメキシコ州のアメリカ先住民族ピクーリス・プエブロ(Picuris Pueblo)の祖先の歴史に関する新たな洞察が、同部族と科学者の共同研究で明らかになったことを報告する論文が、今週のNature にオープンアクセスで掲載される。古代ピクーリス族と現在のピクーリス族のDNAを分析した結果、これらの集団間の遺伝的連続性が示され、ピクーリス族が先祖代々の共同体に属していることを示す伝統的知識を裏付けるものとなった。
ピクーリス・プエブロは、米国ニューメキシコ州のリオ・グランデ(Rio Grande)地方北部に位置する、連邦政府公認のアメリカ先住民族である。伝統的な知識には、現在のピクーリス族とチャコ・キャニオン(Chaco Canyon)の古代集落(現代の集落から西に275キロメートル、およそ紀元900年までさかのぼる)とのつながりが記されている。口承伝承を補完し、知識の空白を埋めるために、ピクーリス族は科学者と協力し、チャコ・キャニオンと彼らの祖先のつながりについてゲノム解析を行なった。その結果が、ピクーリス族の知事Craig QuanchelloとEske Willerslevらによって報告された。
部族との協議のもと、古代のピクーリス族16人(500〜700年前)と現在のピクーリス・プエブロの13人のゲノムの塩基配列が決定された。その結果、これらの集団間の遺伝的連続性が裏付けられ、古代のピクーリス族と現在のピクーリス族が密接な関係にあることが示された。さらに、チャコ・キャニオンのプエブロ・ボニート(Pueblo Bonito)に埋葬された個体から得られた全ゲノムデータとの比較から、古代のピクーリス族はチャコ・キャニオンの個体群と密接に関連していることが明らかになった。これらの知見は、ピクーリス族とチャコ・キャニオンの集団の歴史についての理解を深めるものであるが、他の連邦公認のアメリカ先住民族とチャコ・キャニオンとのつながりを否定するものではない、と著者らは指摘している。
- Article
- Open access
- Published: 30 April 2025
Pinotti, T., Adler, M.A., Mermejo, R. et al. Picuris Pueblo oral history and genomics reveal continuity in US Southwest. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08791-9
doi:10.1038/s41586-025-08791-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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