量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信
Nature
2025年4月24日
ドイツで行われた250キロメートルの通信ネットワークを介した量子メッセージの送信は、既存の商用通信インフラを利用したコヒーレントな量子通信の最初の報告である。今週のNature でこのデモンストレーションを報告する論文が、量子通信が現実世界でも実現可能であることを示唆している。
量子ネットワークは、量子インターネットのような安全な通信を可能にする可能性を秘めている。量子鍵配送(quantum key distribution)は、理論的に安全な通信技術の一例である。光波のコヒーレンス(予測可能な相互作用の可能性)を利用することで、量子通信の範囲を広げることができるが、極低温冷却器などの特殊な装置が必要なため、拡張性に限界があった。
極低温冷却を必要とせず、光ファイバーケーブルを通じて量子情報の配信を可能にするアプローチが、Mirko Pittalugaらによって報告されている。このシステムでは、コヒーレンスベースの双子場量子鍵分散方式が採用されており、長距離での安全な情報配信が容易になっている。この量子通信ネットワークは、ドイツの3つの通信データセンター(フランクフルト、ケール、およびキルヒフェルト)に展開され、254キロメートルの商用光ファイバーで結ばれた。このデモンストレーションは、光のコヒーレンスを利用した高度な量子通信プロトコルが、既存の通信インフラで動作することを示すものである。
- Article
- Published: 23 April 2025
Pittaluga, M., Lo, Y.S., Brzosko, A. et al. Long-distance coherent quantum communications in deployed telecom networks. Nature 640, 911–917 (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-08801-w
doi:10.1038/s41586-025-08801-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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