公衆衛生:毛皮動物における病気の伝播による脅威に関する調査
Nature
2024年9月5日
毛皮用動物は新興感染症の貯蔵庫となり、重要な感染拡大の拠点となる可能性があることを報告する論文が、Natureに掲載される。この研究には、飼育された毛皮用動物のデータも含まれており、種間のウイルスの感染経路を特定し、家畜や人間に感染する可能性のあるウイルスを特定するために、これらの動物の監視を強化すべきであると提言している。
ウイルスの種間伝播は、特に哺乳動物から人間への感染症の発生の重要な要因である。家畜におけるウイルス感染の研究は、豚などの従来の家畜に焦点を当てがちであるが、毛皮用に飼育される動物もまた、新興感染症の病原体の潜在的な温床となり得る。例えば、最近、飼育のヨーロッパミンクの間で H5N1 型インフルエンザ A ウイルスの発生が報告されている。
毛皮用に飼育されている動物に存在するウイルスについてさらに理解を深めるため、Shuo Suらは、中国全土の461匹の毛皮用動物(412匹は飼育下、49匹は自然または人工的に作られた野生環境下)の組織のメタゲノムシーケンシングを行った。これらの動物には、ミンクやアカギツネなどが含まれ、多目的家畜(毛皮やその他の製品用に飼育されている動物)も含まれていた。
著者らは、125種のウイルスを特定し、そのうち36種は新種、39種は種間伝播リスクが高いとされた。特定されたウイルスの中には、コロナウイルスやインフルエンザAウイルスも含まれていた。また、宿主を頻繁に変える証拠を示したウイルスには、11種の人獣共通感染ウイルス(すでにヒトに感染が確認されている)と15種のクロスオーダーウイルス(ヒトには感染しないが、2つ以上の哺乳類の目(もく)に感染が確認されている)が含まれていた。タヌキは、最も多くの高リスクの可能性があるウイルス種(10種)を保有していることが判明しており、モルモット、ウサギ、およびホッキョクギツネもリスクの高い宿主となる可能性があると考えられている。
毛皮用動物飼育から生じる公衆衛生上のリスクを評価するには、これらの動物に対するより広範かつ定期的な監視が必要である。
Zhao, J., Wan, W., Yu, K. et al. Farmed fur animals harbour viruses with zoonotic spillover potential. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-07901-3
doi:10.1038/s41586-024-07901-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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