技術:自動運転車と人間が運転する車の安全性を比較する
Nature Communications
2024年6月19日
自動運転車は、大部分のシナリオにおいて、人間が運転する車よりも事故発生件数が少なかったことを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。今回の研究は、自動運転技術が道路交通の安全性を向上させる可能性があることを裏付ける一方で、改善すべき具体的な分野も明らかにしている。
高度なセンサーとアルゴリズムを備えた自動運転車は、正確に道路上を走行するように設計されており、現在の交通事故の主な原因の1つであるヒューマンエラーを減らすことで、より安全な運転環境を実現できる可能性がある。しかし、自動運転車の安全性便益を最大化するためには、自動運転車の性能が人間のドライバーよりも優れている状況や劣っている状況を理解することが不可欠だ。
今回、Mohamed Abdel-AtyとShengxuan Dingは、2016~2022年に収集された(主に米国カリフォルニア州で発生した)自動運転車(2100台)と人間が運転する車(3万5133台)の事故のデータを比較分析した。その結果、車線中央付近での走行を維持すること、交通の流れに適応することなど、日常的な運転作業を実行する場合には、自動運転車の方が一般的に安全で、事故が発生しにくいことが明らかになった。また、自動運転車の追突事故のリスクは、人間が運転する車の約2分の1、側面衝突事故のリスクは、約5分の1であることも示された。しかし、現在のデータによると、自動運転車は特定の状況下で事故を起こしやすいことが分かっている。例えば、夜明けや夕暮れの薄暗い状況下で事故が発生する確率は、人間が運転する車の5.25倍、右左折時に事故が発生する確率は、1.98倍だった。著者らはこれらの状況について、人間の運転能力に匹敵するか、あるいはそれ以上のレベルを常時達成できるように、自動運転技術をさらに改良する必要があるだろうと指摘している。
今回の研究は、自動運転車によって道路交通の安全性が向上する可能性があることを示唆する一方で、自動運転車がさまざまな状況下で安全に機能できるようにするために技術的限界に取り組むことの重要性も強調している。著者らは、今回の知見について、特に自動運転車の技術レベルと事故時に作動する特定のシステムに関する部分が十分でないと述べている。著者らは、自動運転車と人間が運転する車の安全性の違いをより細やかに理解するには、さらなる研究が必要だと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-024-48526-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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