医学:実験室で培養された「ミニ結腸」をがん研究に用いる
Nature
2024年4月25日
大腸がんのイニシエーションを忠実に再現するオルガノイドモデルが作製されたことを報告する論文が、Natureに掲載される。これらの培養細胞は、腫瘍増殖に関連する複雑な過程の研究に役立ち、治療法の発見を促進する可能性がある。
単純化された臓器細胞(「オルガノイド」と総称される)が実験室内で培養され、がん細胞の挙動を研究するために用いられてきている。ところが、既存のオルガノイドは、複数の細胞タイプと複数段階の組織形成が関係する複雑度の高い過程をモデル化できないという制約がある。こうした複雑な研究は動物モデルで行われる必要があるが、高分解能でリアルタイムに観察することの難度が高く、倫理的な代償も経済的な代償も大きくなる。
今回、Matthias Lutolfらは、実験室環境で腫瘍を発生させることができる大腸がんのオルガノイドモデルを開発した。このオルガノイドは、青色光への曝露をきっかけとして、所定の部位にがん性腫瘍を発生させることができ、その後、数週間にわたって高分解能で追跡することができる。このがん細胞は、マウス由来の細胞の場合と同じ効率と病理で腫瘍を発生させることが示され、動物における大腸腫瘍形成の代表的なモデルであることが示された。Lutolfらは、これらのモデルが遺伝的標的と腫瘍抑制薬の開発と発見に役立ち、がんのプログレッションの全体像をこれまで細胞培養によって明らかになった以上に幅広く充実したものにできると推測している。
このような新技術は、大腸がん研究にとって柔軟で高分解能のシステムとなり、これまで動物モデルでしか見られなかった複雑な過程を模倣することができる。この技術を応用すれば、さらなるがんタイプの研究に使用できるようになり、この研究分野に貴重な実験資源がもたらされるかもしれない。
doi:10.1038/s41586-024-07330-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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