医学研究:MDMAを用いたPTSD治療が、多様な患者群に有効なことが判明
Nature Medicine
2023年9月15日
(+/−)-3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)を用いた治療が、中程度から重度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)のある民族的・人種的に多様な被験者の症状と機能障害を軽減することを明らかにした第3相臨床試験について報告する論文が、Nature Medicineに掲載される。今回の知見は、臨床試験に被験者として含まれることの少ない人々を対象に得られたものであり、これによって、MDMAによる治療の安全性と治療法としての有用性を実証した前回の第3相臨床試験の知見が確認・拡張された。
Jennifer Mitchellらは前回の第3相試験で、MDMAを用いた治療は忍容性が高く、PTSDの症状の程度と機能障害を軽減するという一次エンドポイント、二次エンドポイントが達成できることを、重度のPTSD患者において明らかにした。しかし、これらの知見が中程度のPTSDの人々やPTSD発症のリスクが並外れて高い人々にも一般化できるかは不明だった。心的外傷への曝露には格差があるため、民族的・人種的マイノリティーは、性別多様な人々やトランスジェンダー、ファースト・レスポンダー(災害、事故などの初期対応を行う消防隊員、警察官など)、軍人、退役軍人、長期的な性的虐待の被害者と並んで、PTSDの発症リスクが並外れて高い。
Jennifer Mitchellらは今回、中程度から重度のPTSDと診断された104人の被験者を対象に、MDMAを用いた治療とプラセボによる治療(対照群として)の効果と安全性を評価するランダム化第3相臨床試験を18週間にわたって行った。被験者は民族的・人種的に多様で、34%は白人以外の人種であると自認し、27%はヒスパニックまたはラテン系であると自認していた。Mitchellらは、MDMAを用いた治療によって、プラセボによる治療と比べてPTSDの症状が軽減したと述べている。研究終了までに、MDMAによる治療群では71.2%の被験者がPTSDの診断基準に該当しなくなったが、これに対してプラセボ治療群では被験者の47.6%だったという。また、MDMAによる治療は忍容性が高く、死亡や重篤な副作用は出現しなかった。
Mitchellらは結論として、これらの知見によって前回の臨床試験での観察結果が確認・拡張され、MDMAを用いた治療がより幅広いPTSD患者に対しても有効である可能性が示唆されたと述べている。
doi:10.1038/s41591-023-02565-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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