社会科学:Natureによるバイデン氏支持の影響
Nature Human Behaviour
2023年3月21日
学術誌Natureがジョー・バイデン米国大統領を支持したことで、ドナルド・トランプ支持者の間では、同誌ならびに研究者全般に対して述べられた信頼が減少したことが、4000人以上の参加者を対象とした研究で明らかとなった。このことについて報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。
2020年の米国大統領選挙に先立ち、Natureをはじめとする複数の学術誌がバイデン候補への支持を表明した。2021年7月下旬から8月上旬に実施された事前登録実験においてFloyd Zhangは、4260人の米国人参加者を2つの群、すなわちNatureがバイデン候補を支持したことを要約したメッセージとそれらの記事のスクリーンショットとリンクを受け取る群と、対照となるメッセージ(同誌のウェブサイトおよび印刷版の新しいビジュアルデザインを告知したもの)のスクリーンショットおよびリンクを受け取る群のいずれかに無作為に割り付けた。
その結果、バイデン氏を支持するメッセージは、トランプ支持者集団におけるNatureの信頼度の減少と関連することが分かった。バイデンへの支持に関する情報を受け取ったトランプ支持者たちは、新たなCOVID-19変異株やワクチンの有効性についての情報を得るように促されると、Natureのウェブサイトに掲載された記事にアクセスする割合が、対照群に比べて38%低かった。またバイデン候補への支持は、トランプ支持者たちが米国の研究者全般に対して抱く信頼も減少させた。バイデン支持者たちによるNatureおよび研究者への信頼は、バイデン支持による影響を受けたと確実には言えなかった。さらに、同誌によるバイデンへの支持が、バイデンおよびトランプに関する実験参加者の見解を変えたことを示す証拠はほとんど得られなかった。
今回の実験の結果は、政治的な支持が、特定の集団において学術誌への信頼に影響を及ぼす可能性があることを示唆しているが、そうした支持が、実験条件外の集団に対して負の影響を及ぼしたことを示してはいるわけではない。また、そのような影響が他の学術誌や科学組織に一般化できるかという問いに対しても答えることはできない。Floyd Zhangは、今回報告された態度や行動への影響の持続性を明らかにするためには、さらなる研究が必要であると強調している。
doi:10.1038/s41562-023-01537-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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