工学:鳥のような翼を持つドローンで急旋回が可能に
Communications Engineering
2022年11月25日
市街地や森林のように密集した環境で鳥のように急旋回できる有翼ドローンに関する論文が、Communications Engineeringで発表される。
有翼ドローンは、複数のプロペラを動力源とするドローンより空気力学的にもエネルギー的にも効率的な飛行装置だが、旋回するために必要なスペースが大きくなるため、市街地のように密集した環境での利用が制限されている。
今回、Dario Floreanoたちは、有翼ドローンの旋回性能を向上させるため、鳥から着想したドローンを設計した。これは、繊維強化プラスチック製のドローンで、最大翼長1.5メートル、重さ711グラムで、人工羽毛でできた2枚の主翼と尾翼を持ち、折り畳んだり傾けたりでき、その外観は、鳥の翼に似ている。Floreanoたちは、風洞試験と飛行試験を実施して、主翼と尾翼の動きがドローンのロール速度とドローンの旋回に必要な領域に及ぼす影響を評価した。その結果、それぞれの主翼を異なる角度で傾ける操作をすると、ほぼ同じ角度に傾けておいて片方の翼を広げて、もう片方を格納する操作と比べて、ロール速度が4倍以上になることが分かった。また、主翼と尾翼を外向きに広げる操作をすると、このドローンは、半径4.9メートルで旋回できた。これに対して、主翼と尾翼を格納した場合の旋回半径は12.1メートルだった。これは、この有翼ドローンが急旋回でき、雑然とした環境で飛行できるかもしれないことを示している。
Floreanoたちは、今回の研究で得られた知見が、開放的な環境と密集した環境の両方で長距離飛行できる新しい有翼ドローンの開発に役立つかもしれないという考えを示している。
doi:10.1038/s44172-022-00035-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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