惑星科学:冥王星での氷火山の活動
Nature Communications
2022年3月30日
NASAの探査機ニューホライズンズが準惑星である冥王星で撮影した画像を解析したところ、冥王星で比較的最近に氷火山活動が盛んに起こった地域があり、最も高い氷火山が標高7000メートルに達していることが分かった。この知見を報告する論文が、Nature Communications に掲載される。
氷火山活動は、我々の太陽系のいくつかの地点で観測されており、火山活動による氷状物質の分布の原因として説明されている。冥王星には岩石質の核があるが、これまでの研究から、冥王星内部の加熱は、その歴史の大半において低レベルだったことが示唆されていた。
今回、Kelsi Singerたちは、スプートニク平原という氷床の南西に位置する約1000キロメートルの太古の衝突盆地で、不規則な側面を持つ巨大な隆起地形が数多く分布している地域の画像を解析した。Singerたちは、この地域の地形と組成を調べ、それが氷火山活動と水氷を中心とする物質によって形成されたという考えを示している。Singerたちによれば、この地域には数多くの火山ドームが存在し、それらは高さ数千~7000 メートル、直径約10 ~150キロメートルに及び、一部のドームは合体してより大きな構造物を形成しているという。Singerたちは、こうした巨大構造物の1つとして知られるライト山の推定体積は、地球上で最大の火山の1つである米国ハワイ州のマウナロア山の体積に近いと考えている。Singerたちは、この地形が形成されるには、いくつかの噴火地点と、氷火山を作り上げるための大量の物質が必要だったことを示している。
Singerたちの観測結果によれば、この地形に衝突クレーターはなく、これは冥王星の他の地域の地表とは対照的である。そのため、Singerたちは、この地域での氷火山活動は冥王星の歴史において比較的最近のことであり、冥王星の内部構造に、氷火山活動を推進する残留熱あるいはこれまでの予想を超える量の熱が蓄積されている可能性があるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-022-29056-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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