がん:子宮頸部細胞は卵巣がんや乳がんの発見に役立つ可能性がある
Nature Communications
2022年2月2日
子宮頸がんの検診で採取された細胞を卵巣がんの特定に使用できる可能性があると示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。また、別の論文では、定期検診で採取された子宮頸部細胞を用いて、乳がんの存在を判定できる可能性のある検査法が開発されたことが報告された。いずれの知見も小規模な女性コホートから得られたものだが、卵巣がんと乳がんの早期発見を可能にするかもしれない。
婦人科がん関連死の原因で最も大きな割合を占めるのが卵巣がんで、現在、卵巣がんの75%は、腫瘍が転移した末期の段階で診断されている。卵巣がんを早期発見できれば、治療成績が向上する可能性がある。一方、乳がんは、女性に最も多く見られるがんであり、通常は、マンモグラフィーとその後の生検によって検出される。これまでの研究から、これらのがんの発症リスクの予測にDNAの変化を使用できる可能性が示唆されている。
今回、Martin Widschwendterたちは、卵巣にがんのある女性242人と卵巣にがんのない女性869人からなるコホートから採取した子宮頸部細胞検体を用いた。Widschwendterたちは、これらの検診検体において1万4000のエピジェネティック変化(DNA自体は変化させずに遺伝子発現パターンを変化させる分子修飾)を測定した。その結果、卵巣がんの存在を特定または予測するために使用できる可能性のあるDNAメチル化シグネチャーが特定された。このコホートでは、メチル化シグネチャーを用いることで、50歳未満の卵巣がんの女性の71.4%と50歳以上の卵巣がんの女性の54.5%において、75%の特異性で卵巣がんが特定された。この知見は、さらに別の女性コホート(卵巣がん患者47人と非卵巣がん患者227人)で検証され、検査スコアの高い女性は卵巣がんリスクが高い可能性があることが明らかになった。
また、Widschwendterたちは第2の研究で、予後不良な乳がんの女性329人と乳がんのない女性869人から採取された子宮頸部細胞検体のエピジェネティック変化を解析し、エピジェネティックシグネチャーに基づいて乳がんの女性を特定できることを明らかにした。この知見は、より少ない検体セット(乳がんの女性113人と乳がんのない女性225人)でも確認された。
Widschwendterたちは、以上の知見から、エピジェネティックシグネチャーを用いることが卵巣がんと乳がんの検出に役立つかもしれないと示唆する一方で、これらの検査法によって女性が卵巣がんや乳がんを発症する確率を予測できる可能性があるかを判断するには、さらなる研究と大規模な前向き臨床試験を行う必要があると結論付けている。
doi:10.1038/s41467-021-27918-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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