地球科学:記録に残らなかったチリの津波
Communications Earth & Environment
2021年12月10日
1737年にチリ中南部の沖合で発生した大地震によって大きな津波が発生したと考えられるにもかかわらず、その発生履歴が残っていなかったことを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。この津波現象が認識されたことで、チリ沿岸での津波の発生頻度が、これまで津波の発生履歴のみによって示唆されていたレベルよりも高かったことが示唆されている。
津波ハザードの評価は、特定の海岸線に沿った洪水の発生履歴に基づいて行われることが多い。将来の潜在的リスクを予測する際には、過去の津波発生頻度が用いられる。ところが、津波の報告は、社会不安、その他の危機、あるいは報告の誤りによって大きな影響を受ける可能性があるため、そうした記録には不完全な点がある。
今回、Emma Hockingたちは、1737年の地震が発生した地域に近い潮汐湿地内の堆積物を調査した。その結果、地震と同時期に津波によってできたと考えられる広範囲の砂層が見つかった。また、海洋性藻類種と淡水性藻類種の混合物と地盤沈下の証拠も発見され、その結果、Hockingたちは、河川の氾濫や遠方で発生した津波を、砂質堆積物の発生原因から除外した。
Hockingたちは、津波の発生履歴だけでは津波の発生と特性の完全な記録にならないと考えられ、将来の津波リスクを予測する際には地質学的証拠も考慮すべきだという見解を示している。
doi:10.1038/s43247-021-00319-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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