地球科学:中国王朝の崩壊と火山の噴火との結び付き
Communications Earth & Environment
2021年11月12日
過去2000年の間、火山の噴火によって急激な気候変動が起こり、それが一因となって、当時の中国を統治していた王朝が崩壊するに至った可能性があることを報告する論文が、Communications Earth & Environment に掲載される。今回の知見は、大規模な火山噴火が不安定な地域や脆弱な地域に深刻な影響を与え得ることを示唆している。
産業革命以前の時代には、火山の噴火が主たる原因となって気候が突然変化して、農作物の生育期の気温が低下し、降水量が減少して、農業生産性が低下することが多かった。西暦907年の唐王朝の崩壊と西暦1644年の明王朝の崩壊は、干ばつ現象と寒冷化現象に結び付いていると以前は考えられていた。しかし、気候変動と社会変動の両方の記録が十分に年代決定されていないことが多いため、突発的かつ短期的な気候の変動が社会の崩壊に及ぼす影響を明らかにすることは難しい。
今回、Chaochao Gao、Francis Ludlowたちは、過去2000年間の中国における王朝崩壊の年代をまとめ、爆発的火山噴火の氷床コアに基づく年代と比較した。その結果、特定された68例の王朝崩壊のうち62例について、王朝崩壊の前に少なくとも1回の火山噴火があったことが判明したが、著者たちは、その根底にある原因の複雑さも強調している。著者たちは、継続中の戦争などによる、その当時の社会に存在していたストレスについても調べ、小規模の噴火による気候ショックが王朝崩壊のきっかけとなるのは既存の不安定性が高い場合のみだが、大規模な噴火は既存の不安定性が最少の場合でも王朝崩壊のきっかけとなり得ることを明らかにした。また著者たちは、王朝崩壊に至らなかった大規模噴火が多数あったことも示し、これによって多くの王朝が持つ全体的な復元力が浮き彫りになったと示唆している。
doi:10.1038/s43247-021-00284-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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