スクイーズド光を重力波探査に使う
Nature Physics
2011年9月12日
アインシュタインの一般相対性理論は、大きな恒星の爆発やブラックホールの衝突などの大規模な天文現象が起こると、宇宙の骨組みそのものに重力波と呼ばれるさざ波が生じると予想している。このような波はまだ観測されていない。しかし、光の量子力学的性質を用いて、稼働中の重力波検出器の感度を向上させる方法が、Nature Physics(電子版)で報告される。 重力波が宇宙のある領域を通り過ぎると、池の表面のさざ波によく似た伸び縮みが宇宙自体に生じると予想されている。LIGO研究グループのR Schabelたちは、重力波天文台の世界的なネットワークでこのような宇宙の過渡的なさざ波を検出したいと考えている。各々の重力波天文台では、マイケルソン干渉計と呼ばれるキロメートルサイズの計測器の直交するアームに沿って、2等分されたレーザービームが往復する距離のごくわずかな変動を測定している。 残念なことに、重力波によってこのようなデバイスの出力に生じると予想される変化の大きさは非常に小さく、一般的に光ビームの量子力学的ゆらぎによって生じるノイズよりも小さい。これを克服するため、Schabelたちは、いわゆるスクイーズド光を用いている。これによって、量子力学の法則の抜け穴を利用して、光の1つの特性のゆらぎを増やすことで、もう1つの特性のゆらぎを減らすことができる。 ドイツのザルスタット近郊にあるGEO600干渉計にこの方法を実装することで、この干渉計でこれまでに達成された感度より著しく高いレベルの感度が得られた。
doi:10.1038/nphys2083
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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