社会学:リモートワークが、従業員間の協力に影響していた
Nature Human Behaviour
2021年9月10日
全社的なリモートワークは、従業員同士の協力ネットワークをサイロ化させ、定例ミーティンなどのリアルタイムのコミュニケーションを減少させたことが、米国マイクロソフト社の約6万1000人の従業員を対象に2019年12月~2020年6月に実施されたケーススタディーから明らかになった。この結果についての報告が、Nature Human Behaviour に掲載される。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まった当初の在宅勤務という方策によって、多くの企業はほぼ全ての従業員をリモートワークへと速やかに移行させた。今回、Longqi Yangたちは、こうした仕事のパターンの変更を使って、全社的なリモートワークが、協力およびコミュニケーションのパターンに及ぼす影響を調べた。彼らは、米国マイクロソフト社の従業員の電子メール、電話、定例ミーティング、定期的ではないミーティング、インスタントメッセージなどの大規模な匿名化データを用いて、同僚の多くがオフィスワークからリモートワークへと移行するにつれて、これらのコミュニケーションがどのように変化したかを調べた。その結果、全社的なリモートワークによって、他グループの同僚とのつながりが減少し、別のグループ間の橋渡しをする(ひいては新たな情報へのアクセスの機会をもたらし得る)同僚と過ごす時間を減少したことが分かった。また、リモートワークによって、定例の音声通話やビデオ電話といったリアルタイムコミュニケーションが減少し、電子メールやボイスメールやインスタントメッセージの量が増加して、1週間の平均勤務時間が増えた。
Yangたちは、全社的なリモートワークによって、コミュニケーションおよび協力のパターンが変化し、グループを越えたチームワークの機会が減少する可能性があると示唆している。
doi:10.1038/s41562-021-01196-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
がん:膵臓がんまたは大腸がんの患者において有望な効果を示すワクチンNature Medicine
-
生態学:熱波が熱帯の鳥類の個体数減少と関連しているNature Ecology & Evolution
-
気候変動:ペリト・モレノ氷河の後退が最近大幅に加速Communications Earth & Environment
-
考古学:スペインの洞窟で新石器時代の人肉食の証拠が発見されるScientific Reports
-
気候変動:鉱物資源の不足が低炭素化移行を制限する可能性Nature Climate Change
-
人類の進化:スラウェシ島における初期ホミニンの居住Nature