免疫学:マウスの喘息を予防するワクチン接種
Nature Communications
2021年5月12日
ヒト化マウスモデルにおいて、シグナル伝達分子であるインターロイキン4(IL-4)とインターロイキン13(IL-13)に対するワクチンを接種したところ、アレルギー誘発性喘息の予防効果が少なくとも11週間継続したことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この知見は、喘息治療のための費用対効果の高い長期戦略の可能性を示しているが、この方法の安全性と実現可能性を評価するためにはさらなる研究が必要である。
アレルギー性喘息の特徴は、抗体の一種であるIgEと免疫細胞から放出されるシグナル伝達タンパク質であるサイトカイン(IL-4、IL-13など)のレベルが上昇することである。IgEやIL-4、IL-13を標的とする治療用モノクローナル抗体は、喘息の症状を軽減するが、高コストであり、生涯にわたって投与する必要がある。
今回、Laurent Reberたちの研究チームは、IL-4とIL-13を標的とする1組のワクチンを開発し、このワクチンが慢性喘息の重症度を軽減するのに役立つかを検討した。マウスを使った実験では、ワクチン接種によって、IgEレベルや粘液産生の増加といった慢性喘息の特徴が減り、慢性アレルギー性喘息が最大15週間抑制されることが明らかになった。また、ヒト型のIL-4とIL-13を発現するマウスを用いた実験では、ワクチン接種によって、これら2種のサイトカインのレベルが少なくとも11週間にわたって抑制されることが判明した。Reberたちは、このワクチン接種プログラムが、長期的な喘息治療法になる可能性があるが、さらなる研究が必要であるという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-021-22834-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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