人工知能:人間と討論できるコンピューター
Nature
2021年3月18日
人間と競技ディベートを行うことのできる自律エージェントについて報告する論文が、今週、Nature に掲載される。この自律エージェントの実演では、人間の討論者が勝っていると判定されたが、人工知能(AI)が複雑な人間活動に参加する能力を有している可能性が示唆された。
AIは、人間が行う作業を実行できる機械を作り出すことを可能にする。これまでにAIを使って言語関連の作業を模倣する数々の試みがなされてきたが、結果はまちまちで、それぞれの文に込められた感情を推定できることは実証されたが、要約作業や対話への参加といった複雑な作業は難題であるとされてきた。
今回、Noam Slonimたちは、人間と有意義な討論ができる自律システムProject Debaterを発表した。このシステムは、4億の新聞記事とウィキペディアのページをスキャンして、立論と反論を作成することができる。人間(ディベートの専門家を含む)や既存のAI技術に対するProject Debaterの性能は、さまざまなテーマ(例えば、幼稚園への助成)に関して評価され、ディベートを書き起こした記録を仮想観客に渡して立論と反論の採点を行わせることで、盲検的に審査された。Project Debaterは、立論の作成では、ディベートの専門家に負けただけで高い評価を得たが、ディベートに勝つことはできなかった。Slonimたちは、今のところ、人間との討論がAIのコンフォートゾーンの外にあると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-021-03215-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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