環境:気候の温暖化でヨーロッパの森林が複数の脅威要因に対して脆弱化している
Nature Communications
2021年2月24日
ヨーロッパの森林バイオマスの半分以上が、気候に起因した自然撹乱(火災、昆虫の大発生など)によって失われる可能性があることを報告する論文がNature Communications に掲載される。この知見は、森林管理の改善にとって有益な情報となるかもしれない。
森林の樹木は、常に、火災、強風、自然の害虫の大発生などの撹乱の影響を受けてきており、こうした脅威は、気候変動や土地の改変によって高まる可能性がある。しかし、このような撹乱に対する森林の脆弱性とその経時的な傾向を広域な地理的スケールで定量化することは難しい。
今回、Giovanni Forzieriたちは、1979〜2018年の3大撹乱(火災、風倒木、害虫の大発生)に対するヨーロッパの森林の脆弱性について、撹乱データと衛星観測を機械学習に基づくモデルと統合する手法によって定量化し、地図を作製した。今回の研究では、脆弱性は、所与の撹乱が発生した後に失われた森林バイオマス量として測定された。Forzieriたちは、ヨーロッパの森林バイオマスの約60%(330億トン超)が、風倒木、火災、昆虫の大発生またはそれらの同時発生に対して脆弱だと推定している。特に、スカンジナビアの一部やヨーロッパロシア北部のような急速に温暖化している北部の森林では、過去数十年間に昆虫類の大発生に対する脆弱性が増大しており、これらの地域の昆虫類に対する脆弱性は10年で約2%増大した。
今回の研究ではまた、局所的な気候条件と地形条件によって、森林の一部(林分)が撹乱に対して特に脆弱になるような森林の構造特性が明らかにされている。例えば、樹齢の古い高木からなる林分は、特に干ばつ時に虫害を受けやすくなる。以上の知見は、ヨーロッパの森林の回復力を高めると考えられる土地管理の実践に役立つ情報となる可能性がある。
doi:10.1038/s41467-021-21399-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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