気候科学:海面水温は約1万2000年前から上昇し続けている
Nature
2021年1月28日
全球海面水温が過去1万2000年にわたって上昇し続けていることを示唆した論文が、Nature に掲載される。今回の研究は、完新世にわたる過去の気候変化の再構築に用いられてきた気候モデルとデータとの間に存在していたこれまでの不一致を整合的に説明する上で役立つ。
保存された地質学的資料に基づく過去の気候の再構築は、これまでにも実施されており、約6000年前に温暖化のピークがあり、その後は産業化時代まで気温の低下が続いたことが示されている。しかし、こうした気候の再構築は、完新世を通じて温暖化が続いていたことを示唆する長期的な気候モデリングと一致しない。
今回、Samantha Bovaたちは、最近実施された二度の気候の再構築を改めて解釈し、再構築された気温の大部分が、年間気温ではなく、特定の季節の気温を示すものだったことを明らかにした。そして、Bovaたちは、この点に対処するため、個々の記録の季節的偏りを評価する方法を開発し、これらの記録を用いて年平均海面水温を算出した。その結果、年平均海面水温は過去1万2000年間にわたって着実に上昇しており、これは同時期の気候モデルと一致していることを見いだした。Bovaたちは、この温暖化の原因は、1万2000~6500年前に氷床が後退したことであり、その後は温室効果ガスの排出量増加だとする考えを示している。また、Bovaたちは、現在の気温は過去1万2000年間で最も高く、約12万5000年前の最終間氷期の気温に近い水準にあると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-020-03155-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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