遺伝学:ダイアウルフは進化的に孤立したために窮地に追い込まれた
Nature
2021年1月14日
絶滅したダイアウルフ(Canis dirus)とオオカミ似の現生動物種の直近の共通祖先は、約570万年前までさかのぼることを明らかにした論文が、今週、Nature に掲載される。今回の遺伝子解析の結果はまた、ダイアウルフはアメリカ大陸起源だが、タイリクオオカミ(Canis lupus)とコヨーテ(Canis latrans)とドール(Cuon alpinus)の祖先はユーラシアで進化し、その後、北米に定着したことを示唆している。
ダイアウルフは、オオカミ似の大型動物種で、後期更新世(約12万6000~1万2000年前)のアメリカ大陸に生息していた最も一般的な肉食動物の一種である。ダイアウルフとタイリクオオカミは、体形が似ていることから近縁種だったと考えられているが、正確な関係は明らかになっていない。
今回Laurent Frantzたちは、ダイアウルフの進化史に関する手掛かりを得るため、5万~1万2900年前のダイアウルフの骨化石5点から得たDNAの塩基配列を解読した。その結果、ダイアウルフとオオカミ似の現生のイヌ科動物の直近の共通祖先は、約570万年前までさかのぼり、ダイアウルフは、約510万年前にアフリカに生息していたジャッカル(Canis mesomelasおよびCanis adustus)から分岐したことが明らかになった。また、ダイアウルフ、タイリクオオカミ、コヨーテの間に遺伝子流動があったことを示す証拠は得られなかった。Frantzたちによれば、このことから、混合が起こった可能性は低く、ダイアウルフがタイリクオオカミやコヨーテの祖先から地理的に孤立した状況で進化したことが示唆されるという。
Frantzたちは、ダイアウルフは、他のオオカミ似の動物種の祖先から分岐したのではなかったため、後期更新世の大型動物相の絶滅における生き残りに役立ったかもしれない形質を獲得できなかった可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41586-020-03082-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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