保全:農業の拡大によって2050年までに生物多様性が広範に低下する可能性
Nature Sustainability
2020年12月22日
将来の食料需要を満たすための土地の開墾によって、世界中の陸生脊椎動物種のほぼ90%が、2050年までに生息地の一部を失う可能性があることを明らかにしたモデル化研究について報告する論文が、今週、Nature Sustainability に掲載される。しかし、食料の生産方法、生産地、生産される食料の種類に重点を置いた積極的な政策によって、人間の幸福も支えながら、こうした脅威を低減できる可能性がある。
農業の拡大によって生じる生息地の喪失は、陸生脊椎動物にとって大きな脅威である。人口の増加と必要な食料に基づく予測では、自然の生息地を犠牲にして、200万~1000万平方キロメートルの新たな農地を開墾する必要があると見積もられている。従来の保全の取り組みでは、少数の種や特定の景観に重点が置かれることが多く、こうした流れと闘うには十分でない可能性がある。差し迫った生物多様性の危機に適切に対応するには、何千何万もの種の種特異的評価と位置特異的評価を行い、最も危険にさらされている種と景観を特定する必要がある。
今回David WilliamsとMichael Clarkたちの研究チームは、現行の保全分析の幅と特異性の両方を拡大したモデルを開発した。Williamsたちは、約2万種について推定される農業拡大の影響を調べた。その結果、現状のままでは、分析した陸生鳥類種、両生類種、哺乳類種の87.7%(1万7409種)が、2050年までに生息地の一部を失う可能性があり、そのうち約1200種は、残っている生息地の25%以上を失うことが明らかになった。予測される生息地の平均損失は、サハラ以南のアフリカで最も大きく、ブラジルの大西洋森林、アルゼンチン東部、南アジアと東南アジアの一部でも大きな損失が予測された。
一方で、Williamsたちは、農業生産高の増大、より健康的な食事への移行、食品廃棄物の削減などの積極的な政策によって大きな利益がもたらされる可能性があり、より大きな影響を与える方法は、地域ごとに異なることも示している。
doi:10.1038/s41893-020-00656-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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