スポーツ科学:オリンピックの水泳選手のメダルの色は決勝レースの時間帯によって決まるのかもしれない
Scientific Reports
2020年10月9日
オリンピックの水泳競技の時間帯が、選手の競技成績に影響を及ぼし、金、銀、銅の差を生む可能性のあることを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
オリンピックの開催国は、各大陸での放送に合わせて競技時間を調整することがあり、そのために選手が1日の異なる時間帯、場合によっては尋常でない時間帯に競技に臨むことが求められる。しかし、レースの開始時間が競技成績に及ぼす影響の可能性については、広く研究されていない。
今回、Renske Lokらは、アテネ(2004年)、北京(2008年)、ロンドン(2012年)とリオデジャネイロ(2016年)で開催されたオリンピックの水泳競技で決勝に進出した選手(144人)の競技時間と成績に関するデータを分析した。その結果、競技の時間帯が、成績に有意な影響を与えたことが判明した。最速タイムは、午後遅く(午後5時頃)に記録され、午前8時に実施された競技での記録を0.32%(数秒に相当する)上回った。この時間帯効果は、全レースの40%で第1位と第2位のタイム差を超えており、全レースの64%で第2位と第3位のタイム差を超えていた。これが決勝であれば、金、銀、銅メダル、4位以下という違いを生み出す可能性があるのだ。
今回の研究で得られた知見は、たとえ朝から夜までのきめ細かな練習計画を立てても、競技が予定されている時間帯が選手の成績に影響する可能性のあることを示唆している。Lokらは、選手は体内時計を調節して、通常と異なる競技時間帯に成績のピークを合わせることを検討するのが良いかもしれないと考えている。
doi:10.1038/s41598-020-72573-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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