環境:世界の三角州地帯の住民の洪水に対する脆弱性を明らかにする
Nature Communications
2020年9月30日
2017年には世界の河川三角州地帯に3億3900万人が居住し、そのうちの89%は、大部分の熱帯低気圧の活動域と同じ緯度帯にある三角州地帯に居住していたことを報告する論文が、Nature Communications に掲載される。この論文では、今後、沿岸洪水が激化する可能性が高いため、特に開発途上国と後発開発途上国で、河川三角州地帯の住民が洪水の影響を特に大きく受けることになると結論付けている。
河川三角州地帯は、低地であるため、特に沿岸洪水に対して脆弱だ。その上、熱帯低気圧のような現象が、21世紀末には今よりもさらに激しくなると予測されている。しかし、河川三角州地帯の住民の数と洪水に対する住民たちの脆弱性が不明なため、こうしたハザードを低減するための計画が進んでいない。
今回、Douglas Edmondsたちの研究チームは、世界の河川三角州地帯2174か所のデータセットを構築して、こうした地域の住民の数と洪水災害に対する住民たちの脆弱性を調べた。その結果、2017年に河川三角州地帯に居住しているのは3億3900万人で、そのうちの3億2900万人が開発途上国または後発開発途上国の国民であることが明らかになった。全世界で熱帯低気圧による洪水に被災する地域には7600万人が居住していると推定されており、Edmondsたちの分析によれば、その41%(3100万人)が河川三角州地帯の住民とされる。そのうちの92%(2800万人)が、ハザードの低減に必要なインフラが整備されていない開発途上国または後発開発途上国に居住している。
doi:10.1038/s41467-020-18531-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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