Research Press Release

医学研究:SARS-CoV-2感染に関連して見られ、重症となる小児多臓器炎症症候群(MIS-C)

Nature Medicine

2020年8月18日

小児多臓器炎症症候群(MIS-C)の患者25人の免疫プロファイリングと詳細な臨床症状についての報告がNature Medicine に掲載されている。これらの知見から、MIS-Cは免疫が原因の病気でCOVID-19とは別物だが、以前のSARS-CoV-2感染に関連していることが示唆された。MIS-Cでの免疫応答の基盤となる機構を解明するには、さらなる研究が必要だ。

SARS-CoV-2に関連して小児で見られるこの新しい臨床症候群は、多臓器不全と全身性の炎症を特徴とし、最近の複数の報告によって注目されるようになった。M Shankar-Hariたちは、7~14歳のMIS-C患者25人(男児15人、女児10人)を調べ、17人の血清がSARS-CoV-2抗体陽性であることを明らかにした。血清陰性の8人のうち6人は、以前にSARS-CoV-2感染の症状が出ていたり、COVID-19と確定診断された患者と濃厚接触していたり、あるいは親が医療関係者だったりした。このコホート25人のうち18人には消化器症状があり、7人は放射線検査で肺炎であることが確かめられた。さらに、7人に冠動脈拡張や動脈瘤が認められた。血清陽性状態は消化器症状の程度と関連することが分かり、また冠動脈拡張や動脈瘤は、血清陽性の小児だけに見られた。

著者たちは、この疾患を3つの臨床段階、すなわち急性期(症状が最も重く、入院後72時間以内)、寬解期(臨床症状が好転)、回復期(最初の外来予約)に分類した。次いで、これらの3段階のそれぞれに属する23人、14人、10人の小児から得られた血液検体を分析し、得られた結果を年齢が一致する7人の健康な小児と比較した。成人のCOVID-19患者と同じく、急性期には血中サイトカイン(免疫細胞が放出するシグナル伝達タンパク質)のレベルが上昇していることが分かった。また急性期には、B細胞の総数やさまざまな種類のT細胞の数が減少していることが示された。同様な減少は、COVID-19の成人患者でも観察されている。回復期までには、これらの細胞集団は正常な状態に戻った。著者たちは、MIS-C患者とCOVID-19成人患者の免疫応答にはいくつかの共通点が見られるが、好中球(また別の種類の免疫細胞)の数など、他の点では違いが見られると述べている。

MIS-Cは、小児の炎症症候群の1つである川崎病とは異なるように見えると、著者たちは結論している。だが、今回のコホートは小規模であり、MIS-Cの活性化機構や関連する免疫応答を解明するにはさらに研究が必要だとも述べている。

doi:10.1038/s41591-020-1054-6

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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