疫学:マスクの有効性のモデル化
Nature Communications
2020年8月13日
一般市民がマスクを着用することが、COVID-19の感染者と死者の総数を減らすために役立つ可能性のあることを示したモデル化研究がNature Communications に掲載される。今回の研究によれば、限定的な防御効果しかない布製フェイスマスクであっても、一般的に使用されれば、感染者と死者の総数を減らすために役立つ可能性があるとされる。
今回、Colin WorbyとHsiao-Han Changは、数理モデル化を行って、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が集団発生している時の一般集団におけるマスクの利用状況と配布状況の影響を調べた。この研究では、COVID-19の集団発生のシミュレーションが行われ、医療グレードの使い捨てマスクの供給量と有効性の設定を変えて、それぞれの場合の感染者と死者の総数が算出された。使用された全てのモデルにおいて、マスクの入手状況が好転し、マスクの有効性が高まると、死者と感染者の総数が減少することが分かった。
WorbyとChangは、一般集団における医療グレードの使い捨てマスクの供給量が限られているシナリオに対する4つの配布戦略(無作為配布、高齢者への優先配布、高齢者とウイルス感染が判明した者への配布、ウイルス感染が判明した者への配布)を検討した。使用された全てのモデルでは、医療従事者と主要な職員が適切に防御されていることが前提となっていた。今回の研究では、高齢者に優先配布して、ウイルス感染が判明した者に対するマスクの供給量を確保すれば、無作為配布する場合より感染者と死者の総数を大きく削減できることが分かった。
WorbyとChangは、一般的なフェイスマスク(再利用可能な布製フェイスマスク)の採用をモデル化して、たとえ外科手術用マスクの供給量が総人口の10%にすぎなくても、一般的なフェイスマスクによる総死者数の削減が、医療グレードの使い捨てマスクの選択的配布を行う場合に匹敵することを明らかにしている。そして、一般的な布製フェイスマスクが、死者数を3~5%削減できる可能性があり、これに加えて高齢者と感染症状を示している者に対する医療用マスクの選択的配布を行うと、死者削減効果が倍増する可能性があることも明らかになった。
WorbyとChangは、現在のSARS-CoV-2の感染拡大を抑制するための公衆衛生的措置の重要な要素の1つがマスクの使用だと結論付けている。しかし、COVID-19のパンデミック(世界的大流行)の一般市民におけるマスクの有効性の推定を改善するためには、さらなる研究が必要がある。
doi:10.1038/s41467-020-17922-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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