疫学:武漢では1月上旬にインフルエンザ様疾患患者からSARS-CoV-2が検出されていた
Nature Microbiology
2020年4月8日
2019年10月6日~2020年1月21日に中国の武漢でインフルエンザ様疾患の患者から採取された咽頭スワブ(640検体)の再分析が行われ、9検体から重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が検出された。この新知見は、武漢でのSARS-CoV-2の市中感染が1月上旬に確定していたことを示唆している。今回の研究結果を報告する論文が、Nature Microbiology に掲載される。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARS-CoV-2を原因とし、2019年12月下旬に武漢で初めて報告された。そして、2020年2月23日の時点で、中国におけるSARS-CoV-2感染症症例(7万7000例)の60%が武漢で報告された。こうした報告症例の急増は、武漢と周辺地域でのSARS-CoV-2の市中感染が1月末までに確定したことを示唆している。
今回、Man-Qing Liuたちの研究チームは、武漢で地元のインフルエンザ様疾患の患者がSARS-CoV-2に感染していたかどうかを過去にさかのぼって検証した。このインフルエンザ様疾患は、38℃を超える突発的発熱や咳、咽頭痛を特徴とする。今回の研究では、16週間にわたって患者から採取された咽頭スワブ(640検体)の再分析が行われた。この16週間は、インフルエンザとその他の呼吸器疾患の冬のピークと一致していた。これらの検体の採取は、インフルエンザ監視プログラムの一環として行われ、このコホートに含まれる患者は、武漢にある国立のインフルエンザ監視病院(2か所)の患者(315人の男性と325人の女性)で、年齢は9か月から87歳であった。
再分析したスワブのうち9検体は、SARS-CoV-2のRNAが陽性だった。これらの検体を提供した9人の患者は、武漢市とその周辺地域の異なる区域の出身者だった。このことが、武漢で2020年1月上旬に市中感染があったことを示す証拠となった。今回の研究は、現在進行中のパンデミックの初期段階を解明するための情報をもたらす。
doi:10.1038/s41564-020-0713-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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