進化:現生鳥類が初めて出現した頃
Nature
2020年3月19日
新たに発見された鳥の頭蓋骨化石は、これまでに報告された中で最古の「現生」鳥類の一種とされ、鳥類が多様化した時期に関する手掛かりになるという考えを示した論文が、今週、Nature に掲載される。この化石は、年代測定によって約6680~6670万年前のものとされ、現代のカモやニワトリに見られる特徴がある。今回の研究によって得られた知見は、現生鳥類が白亜紀末の大量絶滅の直前に出現したことを示している。この大量絶滅は、大型の小惑星または彗星の衝突によって引き起こされた。
クラウン群鳥類には、全ての現生鳥類とその全ての子孫(現生種と絶滅種)の共通祖先が含まれる。その初期進化については、化石記録に空白部分があるため、あまり解明が進んでいない。特に中生代(およそ2億5000万年から6600万年前)については、十分な裏付けのある分類群がわずか1つしかなく、後はクラウン群鳥類とのつながりがあいまいな数点の化石断片だけだ。このほど、ベルギーのマーストリヒト層で発見された中生代の化石鳥が、新属新種(Asteriornis maastrichtensisと命名)とされ、化石記録の空白部分を埋める上で役立つかもしれない。
Daniel Fieldたちの論文で、このAsteriornisの化石は、保存状態がよく、ほぼ完全な3次元の頭蓋骨が含まれていることが報告されている。この化石には、陸鳥のような特徴と水鳥のような特徴が組み合わさっており、例えば、嘴は、現代の陸鳥に類似している。Asteriornisという名称は、ギリシャ神話に登場するウズラに姿を変えた流星の女神Asteriaに由来している。この名称は、白亜紀末期の小惑星の衝突が間近に迫っていたことと家禽との類似性を反映している。Fieldたちは、Asteriornisの体重を400グラム弱と見積もった。このように比較的小型で、海洋堆積物の中から発見されたことは、Asteriornisが海岸に生息する鳥であった可能性を示しており、鳥類のクラウングループの多様性のかなりの部分の起源が海岸に生息する鳥に類似しているという仮説を裏付けている。
doi:10.1038/s41586-020-2096-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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