Research Press Release

生態学:北極の極夜を照らす人工光が海洋生物を混乱させている

Communications Biology

2020年3月6日

北極の海面下200メートルに生息する海洋生物が、船舶が発する人工的な光によって撹乱されているという研究報告が、今週Communications Biology に掲載される。この新知見は、極夜に実施される個体群調査が、人工光の悪影響を受け、そのために持続可能性管理の活動が影響を受けるという可能性を示唆している。

魚類や動物プランクトン(海洋動物の一種)は、自然光からの合図を手掛かりに行動パターンや移動パターンを調節している。人工的な光は、これらの動物の方向感覚を失わせ、生態系を阻害することがあり、そのため、研究者が海洋生物を正確に観察する能力に悪い影響が及ぶ可能性がある。ところが、人工光が海洋生物に及ぼす影響については、あまり解明が進んでいない。この点が特に問題になるのが、北極において6カ月続く極夜だ。極夜の間、魚類や動物プランクトンは、夜の光の微妙な変化に依存して生活している。

今回、Jorgen Bergeたちの研究チームは、極夜に船舶からの人工光にさらされた魚類や動物プランクトンの群集がどのように反応するかを北極圏の3つの地点で測定した。その結果、船舶の照明が点灯すると、魚類や動物プランクトンの行動が、ほぼ即座(5秒以内)に変化することが分かった。つまり海面下200メートルまでの範囲で遊泳行動と垂直位置が変化したのだった。また、魚類や動物プランクトンの行動に対する光の影響は、3つの測定地点で異なっていた。行動の変化が最も顕著だったのが、夜間の暗黒度が最も高い最北の測定地点だった。

以上の知見は、今後の極夜における科学的調査や資源評価を行う際に考慮に入れるべきだとBergeたちは結論付けている。

doi:10.1038/s42003-020-0807-6

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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