物理学:ノイズが駆動する魚の群泳
Nature Physics
2020年3月3日
魚の群泳は、個体同士が相互作用している集団に自然に生じる固有のノイズによって特徴づけられる可能性を示した論文が、今週Nature Physics に掲載される。この知見は、動物の群れの集団行動におけるノイズの重要な役割を立証している。
過去10年にわたって、動物の群れの集団行動と、代理指標としてのその群れの各個体の相互作用の研究に多くの努力がなされてきた。しかし、こうした研究の大半では、固有ノイズの役割が見落とされてきた。
集団的な群れを調べる際には、ノイズは除去したり無視したりすべきものと考えられることが多い。しかし、今回J Jhawarたちは、魚の群れのダイナミクスをノイズが特徴付けていると示唆している。群泳は、魚群中の高度に整列した運動であると考えられている。著者たちは、シクリッド科の魚(ダイヤモンドクロマイド:Etroplus suratensis)の群れで実験を行い、群れの個々の魚がどのくらいよく互いに整列し、時間とともにその配列がどのように変動するか測定した。その結果、群れの魚の数が少ないほど、固有のノイズが大きくなり、その結果整列する可能性が高くなることが見いだされた。これは、個々の魚の振る舞いに関する極めて単純な法則を示唆している。すなわち、魚はその向きを自発的に変えるか、ランダムに選んだ魚の向きをまねるかのどちらかなのである。
今回の知見は、個体同士のランダムな相互作用に起因するノイズが、特定の群れの振る舞いを駆動する機構となっている可能性を示していると、著者たちは結論付けている。
doi:10.1038/s41567-020-0787-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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