Research Press Release
【環境】植物による太陽電池由来の鉛の吸収を評価する
Nature Communications
2020年1月22日
一部の植物種は、ペロブスカイト型太陽電池に由来する鉛の吸収が、人間の活動の結果として土壌に残留する存在する他の鉛汚染物質よりも10倍効率的なことが判明した。この新知見を報告する分析研究の論文が、今週掲載される。
ハイブリッド材料のハロゲン化鉛ペロブスカイトを用いると、高い効率の太陽電池を作ることができる。ペロブスカイト薄膜中の鉛の量は、多くの国々で定められている安全限界の0.1%以下であることが計算で示されているが、環境への影響は明らかでない。
今回、Antonio Abateたちの研究チームは、実験室で、鉛を含んだペロブスカイトに汚染された土壌でハッカ、チリ、キャベツを栽培して、それぞれの植物が鉛を吸収する能力を測定した。その結果、ペロブスカイトに由来する鉛の生物学的利用能が他の鉛汚染源より10倍高いことが判明した。今回の研究で行われた別の一連の実験では、鉛の代わりにスズを使った太陽電池の場合に、スズの吸収量が、国連食糧農業機関が提唱している最大耐容レベルを下回ることが分かった。Abateたちは、さまざまな組成のペロブスカイト材料の環境影響スクリーニングをこれまでよりも体系的に行ってからペロブスカイト材料の大量使用に踏み切るべきだという考えを示している。
doi:10.1038/s41467-019-13910-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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