【古生物学】最も古くから陸上を探検していたかもしれない先史時代のサソリの新種
Scientific Reports
2020年1月17日
シルル紀初期(約4億3750万年~4億3650万年前)のものとされる先史時代のサソリの新属新種Parioscorpio venatorについて記述した論文が掲載される。今回の研究で得られた知見からは、P. venatorがこれまでに報告されたものの中で最古のサソリ種で、その海洋生息地から陸上に移動する能力を有していた可能性が示唆されている、この行動は、現代のカブトガニの行動に似ている。
サソリは海中から陸上に移動した最初の動物の1つだが、化石記録が少ないため、陸上での生活にいつどのように適応したのかは明らかになっていない。
今回Andrew Wendruffたちは、米国ウィスコンシン州のウォーキシャ生物相で発見され、シルル紀初期のものと年代測定された保存状態の良好な未知の化石種のサソリの標本2点について記述している。今回の研究により、スコットランドで発見され、これまで最も古いサソリ種とされてきたDolichophonus loudonensisよりも古い化石となった。
P. venatorには、他の初期の海洋生物に見られる原始的な特徴(複眼など)がいくつか見られる一方で、現代のサソリの特徴(先端に毒針のある尾など)も見られる。2点のP. venatorの標本のいずれにも、内部構造が細かな点まで示されており、例えば、くびれた砂時計型の構造体が、胴体の中心部分に沿って、かなりの領域に及んでいる。この構造体は、現代のサソリだけでなく、現代のカブトガニの循環器系や呼吸器系と非常によく似ているとWendruffたちは考えている。
P. venatorの化石には肺や鰓が見つからなかったが、陸上で呼吸できるカブトガニに似ていることから、最古のサソリが完全に陸生化していなかったかもしれないが、陸上に移動して、長時間滞在していた可能性が示唆されている。
doi:10.1038/s41598-019-56010-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change