【神経科学】記憶の再固定化を阻害すればアルコール摂取量を減らせるかもしれない
Nature Communications
2019年11月27日
アルコール報酬記憶を想起した直後にケタミンを単回投与すると、この記憶の再固定化が阻害されて、アルコール摂取量の減少につながった。この研究結果を報告する論文が今週掲載される。今回の研究には90人が参加した。
再固定化は、記憶を維持するプロセスであり、再活性化した長期記憶が一時的に不安定化して、新しい情報を取り込む。そして、不安定化した記憶は、N-メチルD-アスパラギン酸受容体(NMDAR)経路によって新しい形の記憶として安定化する。この記憶の再固定化が進行している間に(ケタミンなどのNMDAR拮抗薬の投与による)薬理学的介入を実施すれば、不適応報酬記憶(例えば、有害な薬物使用行動に関連する記憶)を弱められる可能性があると考えられている。
今回の研究で、Ravi Dasたちは、ケタミンが過度のアルコール使用行動に関連する記憶を弱めて、飲酒量を減らせるかどうかを明らかにしようとした。この研究に集められたのは、有害な飲酒パターンを示しているが、アルコール使用障害と正式に診断されておらず、治療を求めていなかった参加者90人(男性55人と女性35人、平均年齢約28歳)だった。そのうちの60人に、一連のビールの画像を見せて、アルコールに関連する不適応報酬記憶を想起させてから、ケタミン(30人)または生理食塩水(30人)を注射した。残りの30人には、記憶の想起をさせずにケタミンを注射した。次に、いくつかの追跡調査時点を設定し、参加者が飲酒行動(飲酒量、楽しさ、欲求)の変化に気づいた場合に、その変化を報告させた。その結果、記憶の想起があった後にケタミンを投与した場合、その後の最大9か月間に、1週間の飲酒日数が減り、アルコール摂取量も減少したことが判明した。ケタミンと記憶の想起の組み合わせは、ケタミンの単独投与よりも飲酒を大きく減らすことができた。
doi:10.1038/s41467-019-13162-w
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