【医学研究】肝繊維症の画像化
Nature Communications
2019年10月30日
マウスモデルにおける肝繊維症の早期発見とその重症度の評価のための非侵襲的な画像化法を紹介する論文が今週掲載される。
多くの慢性肝疾患は肝硬変に進行し得る。肝硬変は、肝臓の構造と機能が著しく損なわれる末期繊維症で、細胞外マトリックスの過剰な蓄積を特徴とする。米国では、45~64歳の人々における慢性肝疾患と肝硬変を原因とする死亡率が、2000年から2015年までに31%増加した。肝繊維症を初期段階で発見し、その重症度を判定することは、慢性肝疾患の進行を止めて治療計画を立てるうえで重要だが、非侵襲的で正確な検出・判定方法が必要となるため、生検が依然として最も標準的な方法となっている。
今回、Jenny Yangたちの研究グループは、この細胞外マトリックスの成分であるコラーゲンに高い親和性で結合する磁気共鳴画像化用造影剤を開発した。この造影剤を用いることで、コラーゲンの非侵襲的検出ができ、アルコール、食餌と化学物質が引き起こす肝疾患のマウスモデルにおける初期繊維症と末期繊維症の鑑別もでき、さらには、抗繊維化薬ピルフェニドンによる処置を受けたマウスにおける繊維症の退縮のモニタリングも可能になる。
Yangたちが開発した造影剤は、動物やヒトの実験を積み重ねて有効性の評価が進めば、肝繊維症の非侵襲的かつ正確な検出に対する障害を克服する上で役立ち、診断の改善と治療効果のモニタリングが実現するかもしれない。
doi:10.1038/s41467-019-11984-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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