Research Press Release
プルトニウム中毒
Nature Chemical Biology
2011年6月27日
Nature Chemical Biology(電子版)で発表される論文が、体の細胞が放射性元素プルトニウムを取り込む仕組みに関する洞察をもたらしている。日本では福島の原子炉で最近事故が発生し、日本国外の原子炉ではプルトニウム含有燃料が使用されている中で、この研究は、環境のプルトニウム汚染に曝露された人間の細胞が取り込むプルトニウムの量を最小限に抑える方法の研究に役立つと考えられる。
プルトニウムは、人体への毒性を有するほぼ人工的な元素である。化学的特性の一部を鉄と共有するプルトニウムは、細胞が無機栄養素の獲得に利用するのと同じ経路で取り込まれるのではないかと考えられていた。
M Jensenたちは、確かにそのとおりではあるものの、留意すべき点が1つあることを明らかにした。細胞内に鉄を運び込む輸送タンパク質が細胞内に入ることができるのは、鉄と結合する部位を持つこのタンパク質の突出部が2つとも閉じることができる場合に限られる。意外にも、プルトニウムとの結合時に閉じることができる突出部は一方のみであり、細胞にプルトニウムが取り込まれるには、もう一方の突出部に結合する鉄の助けが必要なのである。
doi:10.1038/nchembio.594
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
動物学:雌のボノボは団結し、雄に対して優位性を発揮するCommunications Biology
-
量子物理学:通信インフラを活用した長距離量子通信Nature
-
人類学:カルタゴとフェニキアの間に家族的なつながりはほとんどないNature
-
気候変動:温暖化が進む世界で急激な「気温の変化」が増えているNature Communications
-
健康:高血圧の治療は認知症リスクを低減するかもしれないNature Medicine
-
気候:都市のヒートアイランド現象による気温関連死の評価Nature Climate Change