Research Press Release

【惑星科学】火星にメタンは存在しない?

Nature

2019年4月11日

Planetary science: Martian methane mystery

火星探査ミッション「エクソマーズ」の探査機トレース・ガス・オービター(TGO)による初期観測結果を紹介する2編の論文が、今週掲載される。一方の論文によれば、先行研究(4月上旬にNature Geoscienceで発表された論文を含む)の結果に反して、TGOは火星でメタンを検出しておらず、この食い違いの原因について疑問が生じている。もう一方の論文には、火星ではめったに起こらない惑星規模の砂塵嵐について記述されており、この事象は火星の大気に及ぼす影響を解明する上で役立つ可能性がある。

2016年のTGOミッションの重要な目標の1つは、火星の大気ガスについての解明を進めることだった。例えば、メタンが検出されれば、生命活動や地質学的活動の証拠となる可能性がある。またTGOは、火星の大気モデルの精緻化を図るため、火星の大気組成と気温の季節変動を監視している。

Oleg Korablevたちの論文は、2018年4~8月に行われた、メタンを検出するための高感度観測について記述している。この期間の観測では、両半球の一定範囲の緯度域でメタンは検出されず、メタンの上限値は、メタンの検出を報告した先行研究における観測値のわずか10分の1~100分の1だった。Korablevたちは、今回の観測結果と過去の観測結果の不一致を解決するには、メタンを大気下層から急速に除去する未知の過程が働いていると考える必要があることを示唆している。

一方、Ann C. Vandaeleたちの別の論文は、砂塵嵐が火星の大気に及ぼす影響について記述している。火星では、こうした砂塵嵐はめったに起こらないが、大気に対する影響は数か月間続き、水蒸気の分布を変えて、気候変動を引き起こす可能性もある。Vandaeleたちはまた、TGOの機内に回収された砂塵、水、および準重水(HDO;通常よりも水素同位体の重水素の含有量が多い水)の高分解能測定の結果を示している。この測定結果から、砂塵嵐が始まった2018年5月30日以降、水とHDOの存在量が急増したことが判明した。その原因について、Vandaeleたちは、砂塵嵐が発生すると気温が上昇して、大気循環が強まって氷雲形成が妨げられ、これによって水蒸気が標高の低いところに局在するという考えを示している。この知見から、火星の環境に対する砂塵嵐の影響は急速に現れることが明らかになった。

doi:10.1038/s41586-019-1096-4

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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