【生態学】グレートバリアリーフでサンゴの回復が進まない原因
Nature
2019年4月4日
2016年と2017年にグレートバリアリーフで大量白化現象が発生した後に補充された新しいサンゴの幼生が89%減少したことを報告する論文が、今週掲載される。今後20年間に極端な気候事象の発生が増えると予想されているため、グレートバリアリーフがどの程度回復可能なのかは明確になっていない。
グレートバリアリーフでは、過去20年間に大量白化現象が4回発生しており、温室効果ガスの排出に関してこれまで通りの対策しか実施されないシナリオでの予測によれば、白化は、2035年以降は10年間に2回、2044年以降は年1回の頻度で発生するようになる。
今回、Terry Hughesたちの研究グループは、極端な気候事象が発生した後のグレートバリアリーフの回復能力を調べるために、2016年と2017年の大量白化現象の前後におけるサンゴの成群体と幼生の補充の関係を検討した。その結果、サンゴの成群体の消失が幼生の補充の崩壊と関連しており、補充されたサンゴ種の組成に変化が見られることが分かった。幼生保育型サンゴは、受精した幼生を放出すると、これらの幼生は通常、24時間以内に定着する。一方、放卵放精型サンゴは、卵や精子を放出すると、それらは体外で受精し、幼生は4~7日後に定着する。Hughesたちは、幼生の補充が激減した水域で優占種となるのは、広範囲に散在し多様性に富んだ放卵放精型サンゴの幼生ではなく、隣接地域からやってきた幼生保育型サンゴの幼生であるという観察結果を示している。
幼生の補充に変化が生じると、回復しつつあるサンゴ群集の組成が影響を受け、今後の白化現象に対応する能力も影響を受ける可能性があると、Hughesたちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-019-1081-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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