【工学】作動音の静かな固体推進系を装備した航空機の飛行
Nature
2018年11月22日
可動部品を使ったエンジンではなく、固体推進系を装備した小型航空機の飛行について説明した論文が、今週掲載される。この知見は、より静かで、機械的に単純で、燃焼排出物を放出しない航空機の可能性を初めて示している。
これまでの航空機は、プロペラやタービンなど、可動部品を使ったエンジンを動力源とし、化石燃料の燃焼を用いるのが通例だ。これに対して、電気力によって液体中のイオンを加速してイオン風を発生させることで推力を生み出す電気空気力学的装置が、航空機の推力を発生させる方法として新たに提案されているが、この装置を装備した航空機が飛行したことはない。
今回、Steven Barrettたちの研究グループは、電気空気力学的推進系を装備した小型の固定翼航空機を設計し、飛行を実証した。この航空機は、翼長が5メートル、機体重量が2.45キログラムで、電源スタックと約500ワットを出力できる高圧電力変換装置からなる特製システムを動力源としている。この航空機は、室内空間で10回の試験飛行を行い、60メートルの飛行に成功し、平均飛行高度は0.47メートルだった。この推進系の推力電力比は、ジェットエンジンのような従来の推進系によって実現されたレベルに匹敵するが、総合効率では劣っている。なお、Barrettたちは、今回設計した航空機では高効率化よりも小型化を優先させたが、将来的には効率を高めた航空機の設計も可能なことを報告している。
Barrettたちは、この電気空気力学的装置を動力源とする航空機の初めての試験飛行が、可動部品を使った推進系を装備した航空機の初期の飛行と比べても遜色がないと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-018-0707-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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